2019 年 9 巻 3 号 p. 127-131
[目的]高齢者のカート歩行と認知機能の関係を検討した。[方法]対象は地域在住高齢者28名(男12,女16,平均77.1歳)。3種の認知機能検査成績および歩行データを収集した。後者については,5m歩行とTimedUpandGoTest(TUG)を設定し,それぞれで通常歩行,カート歩行,カート歩行に連続減算課題を付したカート付加課題歩行を実施し,歩行時間とTUG での歩行阻害(コーンに接触する等)回数を計測した。[結果]5m歩行では,カート歩行と比べてカート付加課題歩行の時間は有意に延長した。TUG では,通常歩行と比べてカート歩行,カート歩行と比べてカート付加課題歩行の時間が有意に延長した。TUG 阻害回数とTrail Making Test-A の所要時間に有意な正の相関を認めた。[結語]カート歩行能力の評価としては,単純な直線歩行だけでなく,より複雑なTUG のような歩行の評価が必要と考える。注意機能が低下している高齢者が日常生活の中でカートを使用する際は,カート操作の練習を入念に行うことが必要と考える。