抄録
症例は32歳の男性.主訴は血便.口唇・手指・足蹠に粟粒大の黒褐色色素班を認めた.胃全体に山田I ~III型の数mm大のポリープが散在しており,十二指腸球部と上行脚にもポリープを認めた.さらに,全大腸に有茎性から亜有茎性のポリープを多数認め,Peutz-Jeghers症候群と診断,経内視鏡的大腸ポリペクトミーを施行した.下行結腸の25×17mm大,山田IV 型過誤腫性ポリープの表層に約1mmの高分化腺癌の小病巣が認められ,その周囲には明らかな腺腫性病変は見られなかった.本症に大腸癌が合併したとする本邦報告は自験例を含め49例58病変見られている.自験例の大腸ポリープは腺腫組織を介さずに直接癌化した可能性が示唆された.