抄録
塞栓・硬化剤としてGT-XIIIを用いる新しい内視鏡的硬化療法を,食道静脈瘤を有する各種肝疾患81症例(施行回数168回)に施行し,その効果および合併症について検討した.対照法は本法施行まで当科で行っていたGlucose,ThrombinおよびAethoxysklerolの併用法とした.GT-XIII法では抜針後の出血はほとんどなく,バルーンなどの圧迫や大量のThrombin併用の必要はなく,1回の施行で多くの静脈瘤の治療が可能であった.その結果,緊急出血例での7日以上の止血率は17例中15例(88%)で,対照法と同等であった.緊急例も含めた全施行例のRC sign消失時点でのF因子の改善率は81例中60例(74%)で,対照法と同等であった.いっぽう,本法の主な合併症では51%に38℃以上の発熱,36%に食道付近の疼痛,12%に食道潰瘍形成および3例に脳血管障害が認められたが,Shockの発生や術後出血の症例はなかった.さらに,本法にフィンガー・ピース型ICGクリアランス・メーターを応用し,GT-XIIIが注入局所に留まることを推測し,剖検例でGT-XIII特有のParticleに血球成分を混じた塞栓と器質化しつつある血栓が組織学的に確認された.以上より本法は有効,安全かつ簡便な内視鏡的静脈瘤硬化療法と考えられた.