抄録
大腸内視鏡検査前処置の際,polyethylene glycol electrolyte lavage solution(PEG-ELS)を用いると内視鏡挿入時,泡の存在により詳細な観察が困難な場合がある. われわれはこの問題を解決するために,dimethylpolysiloxane (DMPS,Gascon®)をPEG-ELSに添加することを試みた.基礎実験では,sodium N-lauroyl sarcocinateを用いPEG-ELSを発泡させDMPS濃度別に消泡効果を検討した.PEG-ELS中のDMPS濃度が5ppm以上で消泡効果を認め,20ppmでは約20秒で消泡が得られた.臨床例では,DMPS含有PEG-ELS使用群(DMPS含有群,DMPS濃度:20ppm)とDMPS非含有PEG-ELS使用群(DMPS非含有群)で腸管内の泡の有無を比較した.DMPS含有群では,内視鏡挿入時ほとんどの症例で泡は認められず,DMPS非含有群に比べ内視鏡の挿入および粘膜面の観察は容易であった.大腸内視鏡検査前処置に低濃度DMPS含有PEG-ELSを使用した報告はこれまでになくわれわれが最初である.