抄録
私どもはゼラチン溶解液を用いた内視鏡的局注止血法を開発した.本法は中性,非抗原性物質である粉末ゼラチン(Gelfoam. Upjohn Co.USA)を出血血管の周囲及び出血巣へ局注する方法である.本法の作用機序は出血源となる血管を局注物質により圧迫止血することが主体であるため,エタノールと異なり局注による潰瘍形成や穿孔の危険が無いことが利点である.上部消化管出血24例,下部消化管出血21例における初回止血率は100%であり,潰瘍性大腸炎3例と直腸悪性リンパ腫1例の待機手術例を除く41例すべてが3年10カ月を最長とし再出血なく経過している.本法は種々の止血法に比べ,簡便性,安全性に優れた普遍的な内視鏡的止血法と考える.本稿では動物実験例から止血作用機序と安全性を考察し,臨床応用の手技及び成績を報告した.