日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ラットを用いた実験的大腸炎の内視鏡的検討
塚田 英昭清野 裕上田 俊二内野 治人酒井 正彦三宅 健夫
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1989 年 31 巻 2 号 p. 371-378_1

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抄録
ヒト炎症性腸疾患の病態を把握する目的で,これらの代表的な実験モデルとしてラットを用い低分子デキストラン硫酸による大腸炎,および酢酸による腐食性大腸炎を作成して,経時的な内視鏡像,組織像および病変部粘膜血流の比較検討を試みた.本法により詳細な大腸粘膜の経時的内視鏡観察が可能であった.病変作成直後では,粘膜浮腫による血管透見像の消失,著明な粘膜発赤,潰瘍性病変,粘膜出血が経時的に認められた.これらはヒト炎症性腸疾患に類似する所見が認められた.しかし粘膜血流は炎症の強いときに最も低値を示し,炎症の消退に伴い改善し,これはヒト炎症性腸疾患の場合と相反する結果であった.この違いについては明らかではないが,ひとつにはヒト炎症性腸疾患と実験的大腸炎の病因の違いによるものが考えられた.またこれらの実験的大腸炎の観察はヒト大腸粘膜の炎症状態を内視鏡下に,かつ的確に把握するための一助になると思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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