抄録
手術非適応肝硬変例に対する内視鏡的硬化療法(EIS)の長期効果を自然経過観察例と対比検討した.われわれの手術適応基準である,1)腹水,脳症のcontrolが十分可能である,2)血清ビリルビン2.0mg/d1以下,KICG0.05以上,3)肝癌非合併の3項目に照合して手術非適応と判定してEISを施行した42例と,CBF2,3RCsign陽性の食道静脈瘤を有し手術非適応で内科的保存療法のみで経過観察した68例の計110例を調査対象とした.EIS群42例中8例(19.1%)が平均12.2カ月後に食道静脈瘤出血をきたし,内5例(11.9%)が出血死し,自然経過群と比べて出血,出血死の頻度が有意に低率であった(P<0.01).EIS群の1年,2年生存率は,それぞれ74.9%,47.0%であり,自然経過群の生存率と比べ有意にすぐれていた(P<0.01).死亡例の直接死因は,EIS群では肝細胞癌死が最も多く,自然経過群では食道静脈瘤出血死が最も高率であった.以上の結果より,EISは手術非適応肝硬変例の長期予後において,食道静脈瘤出血,出血死を減少させ,生存率の向上に有用な治療であると結論した.