日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道静脈瘤に対する内視鏡下食道静脈瘤硬化療法に関する研究
―とくにEthanolamine oleateの少量注入法について―
安部 孝
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3171-3179

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抄録
 5%Ethanolamine oleate(以下EO)の比較的少量を食道静脈瘤内に注入する内視鏡下静脈瘤栓塞術(Endoscopic injection sclerotherapy―以下EIS)の効果と安全性を検討した.EOの注入量は1カ所に2ml未満,1本の静脈瘤に5ml未満,1回のEISの総量は20ml未満とした.1本の静脈瘤に5ml以上,または,1回のEISに20ml以上のEOを注入した例を多量注入群とした.対象は1980年から1988年4月までに当科でEISをおこなった120例に対する170シリーズである.170シリーズのEISで食道静脈瘤が消失,または硬く細い直線状のFlCwRC(-)までに改善した140シリーズ中EIS未完成の22シリーズを除く118シリーズについて,食道静脈瘤再発までの期間を少量注入群91シリーズと多量注入群27シリーズで比較した.食道静脈瘤再発率は,1年後では少量群は31%,多量群は38%,2年後では各々53%と58%であり再発率でも両群間に有為差はなかった.少量注入法による緊急止血効果は41シリーズに行い92.7%に有効であった.合併症は多量注入群では66%にみられたが少量群では29%と低率であり,特に重篤な合併症はみられなかった.
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