日本消化器内視鏡学会雑誌
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特発性食道静脈瘤の1例
西村 浩一老子 善康野田 隆卜部 健野ツ俣 和夫元雄 良治米島 学鵜浦 雅志小林 健一服部 信松井 修
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1988 年 30 巻 12 号 p. 3121-3124_1

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抄録
食道静脈瘤の多くは,門脈圧亢進症あるいは上大静脈系の異常に基ずいて形成されるがこれとは別に,いずれの原因も認められない特発性食道静脈瘤が存在する.われわれは直接門脈圧を測定し得た特発性食道静脈瘤の1例を経験したので報告する. 症例は35歳の男性で,上腹部痛を認め当科初診し,内視鏡検査にて食道静脈瘤を指摘された.血液学的検査では肝機能検査を含めてすべて正常,腹腔鏡では大白色肝,肝生検では門脈域の軽度の線維化を認めるにすぎなかった.腹部血管造影では側副血行路は認められず,経皮経肝的直接門脈造影でも門脈像は正常であり,門脈圧も8cmと正常で門脈圧亢進は認められなかった。一方,胸部CTでは上大静脈系の異常は認められなかった. これまで本例の如く,直接門脈圧を測定し完全に門脈圧亢進症の存在を否定し得た特発性食道静脈瘤の例は報告されていない.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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