日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
電子内視鏡による早期胃癌病変の境界認識に関する検討
大坂 直文芦田 潔折野 真哉鄭 鳳鉉平田 一郎大柴 三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 30 巻 12 号 p. 3062-3066_1

詳細
抄録
臨床的に早期胃癌と診断された37例を電子内視鏡で観察し,病変部と周囲正常粘膜との肉眼的判別根拠をA:niveau difference, B:disappearance of capillary transparence, C:discoloration, D:spotty rednessの4群に分類した.その所見を基に病変と正常粘膜との境界線を設定し,その病変側と正常側と思われた粘膜から生検を施行して上記の所見の診断精度を検討した.その結果,病変側の正診率すなわち,癌を癌と認識できた率は97.0%(32/33)であり,一方,非癌部を非癌部と判定できた率は75.6%(25/33)であった.分化型癌と低分化型癌に2分した場合の正診率を比較すると,それぞれ89.5%(17/19)と50.0%(7/14)であり,低分化型癌は電子内視鏡的に認識された境界線よりもより広く浸潤している事が多く,これは境界部の粘膜固有層内に癌細胞がまばらに存在していたためであった.A,B,C,Dの4群の所見別による各々の境界認識正診率はそれぞれ,33.3%(1/3),100.0%(3/3),61.5%(8/13),85.7%(12/14)であった.A,Cの正常側と思われた粘膜からの生検ではそれぞれ66.7%(2/3),30.8%(4/13)に癌細胞が認められ注意を要すると思われた.
著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top