日本消化器内視鏡学会雑誌
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幽門輪潰瘍に関する臨床的,内視鏡的検討
白井 孝之伊藤 慎芳福岡 賢一土谷 春仁北村 明桜井 幸弘池上 文詔多賀須 幸男
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1988 年 30 巻 1 号 p. 57-62_1

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抄録
細径前方視鏡による観察で幽門輪にかかる潰瘍を幽門輪潰瘍と呼ぶことにして調査し,以下の結果を得た.最近7年間の幽門輪潰瘍は77例で,同期間の全消化性潰瘍症例の1.7%であった.性比,年齢分布等の臨床的背景は,胃潰瘍より十二指腸潰瘍に近似していた.非定型的疼痛,嘔気嘔吐,やせ等のpyloric channel syndromeを呈するものは30%と意外に少なかった.内視鏡的形態は,単発54例,線状15例,接吻8例で,前壁側(33.6%),小彎側(30%)に多かった.胃潰瘍の併存は54.5%と極めて高率で,十二指腸潰瘍の胃潰瘍併存率(23.7%)を遙かに上回った.一方幽門輪から明らかに離れた十二指腸球部の潰瘍の併存は,幽門輪潰瘍の9.1%に過ぎなかった.経過観察中に,幽門輪潰瘍が球部内の潰瘍ないし瘢痕とみなすべき状態になったものが5例みられた.以上の所見を総合すると,幽門輪潰瘍は十二指腸潰瘍に近縁の病変で,さらにその一部に,本来は十二指腸潰瘍であるが,浮腫,変形等により幽門輪潰瘍として観察されているものが含まれている可能性が示唆された.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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