抄録
昭和45年より昭和56年までに腹腔鏡検査を実施した841例のうち,虫垂切除術と鼠径ヘルニア手術を除く,開腹手術既往者48例について,腹腔鏡検査の適応と実施法を知る目的で検討を加えた.48例のうち上腹部手術既往者は9例で,下腹部手術既往者は39例であった.その結果,手術例では2例に全く肝臓の観察が不可能な症例が存在したが,非手術例にも5例の観察不可能症例が存在した.手術例では全例に腹壁と腹腔内臓器との癒着が多少とも認められたが,非手術例にも3例に腹腔内癒着による肝臓の観察が不可能な症例が存在した.以上より開腹手術の既往を持った症例では,十分に気腹を実施し,套管針を手術創より離して挿入することが大切と考えられた.また非手術例にも強い癒着例が認められたことから,套管針挿入部の麻酔時に,注入気体の排出を確認して,以後の操作を行なうことが重要と思われた.