抄録
著者は,細径前方直視型panendoscopeを用い,メチレンブルー染色法を併用して,150例を対象とし,胃・十二指腸粘膜境界の内視鏡的検討を行った.そして,粘膜境界を,境界がほぼ十二指腸側幽門輪上にあるtype Iと,境界が球部内に入りこんだtype IIの2型に分類した.この頻度は各々17.3%,82.7%であった.胃粘膜萎縮の軽度な例ではtype IIが98.6%と大部分をしめたが,萎縮が広汎となるにつれtype IIが67.9%と減少しtype Iが32.1%と増加した.なお,幽門前庭部に腸上皮化生を認めない例では,粘膜境界はすべてtype IIであったが,腸上皮化生の著明なものでは,type I, IIが同率であった.また,切除組織と対比できたものについて,内視鏡的粘膜境界の位置と切除組織の粘膜境界の位置を検討した結果,よく一致していた.さらに,十二指腸球部潰瘍31例36病変について検討したところ,33病変(91.7%)は境界との距離10mm以内に位置しており,全病変の粘膜境界との平均距離は7.2mmであった.加えて,十二指腸球部内胃粘膜に発生した幽門輪潰瘍と,粘膜境界の十二指腸側に島状に存在した胃底腺巣の症例を経験した.