日本消化器内視鏡学会雑誌
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多発胃癌の内視鏡診断の実態と対策― Congo red-methylene blue testによる成績を中心として―
竜田 正晴奥田 茂谷口 春生
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1982 年 24 巻 7 号 p. 1066-1075_1

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抄録
 多発胃癌の内視鏡診断の実態を分析するとともにわれわれが考案したCongo red-methylene blue testによる多発胃癌の診断成績について検討した. 当センターで経験した153例189病巣の多発胃癌の多くは高齢者の男性で,内視鏡的に診断が困難な表面平坦型早期胃癌IIbや5mm以下の微小胃癌が多く,胃切除に際して問題となる.IIb型,I型,IIa型,すう襞集中を伴なわないIIc型やBorrmannI型には副癌巣を伴なうことが多く慎重な内視鏡観察が必要である.この際副癌巣は主癌巣と類似した肉眼病型を示めすものが多いことは副癌巣を発見する手がかりとなる.内視鏡的には術前に「癌」と確診されたものはわずかに27.5%に過ぎないが,その多くは撮影方法に問題があり,術前に丹念な観察をすれば診断可能である.しかし,微小癌,IIb型早期胃癌ではretrospectiveにも異常所見を指摘しえないものが多く,補助診断法の併用が必要である. われわれが考案したCongo red-methylene blue testは1回の検査で胃粘膜表面の微細観察,腸上皮化生の分布,体部胃炎の拡がり,酸分泌領域の観察が可能で,本法により多発胃癌の診断成績は著しく向上し,従来診断困難であった多発微小IIb型早期癌の診断も可能であった.多発癌の多くはCongo red,methylene blue色素がいずれも白色に腿色した領域として観察できたが,methylene blue色素の噴霧により粘膜の微細な変化があきらかになり存在診断が可能となったものも少なくない.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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