2016 年 58 巻 9 号 p. 1504-1507
・昭和51年:山形大学医学部附属病院の開設時に,中央検査部に所属する内視鏡室として業務を開始した.
・平成5年:電子内視鏡画像ファイリングシステムを導入した.
・平成13年:特殊診療施設として独立し,光学医療診療部と名称を変更した.
・平成27年4月:附属病院再整備事業による工事が完成し,新たな光学医療診療部が運用開始となった.
組織特殊診療施設として独立した位置付けとなっている.
検査室レイアウト総面積:465.86m2
内視鏡検査室計:144m2
リカバリー室:18m2
カンファレンス室:30m2
洗浄室:36.5m2
新光学医療診療部は面積が拡大し(旧195m2→新465m2),各検査スペース(20~24m2)の個室化を図り,患者プライバシーに配慮した検査室となった.また,ESDなどの治療内視鏡を行うための専用室を治療内視鏡室として配置した.電源,医療ガスの供給や吸引,画像ケーブル等は,すべて天吊りユニットからの配線となり,床上にケーブルやコードの無い状態で,環境衛生の向上が得られている.
・消化器内視鏡(消化管,肝胆膵)を消化器内科が,気管支内視鏡検査を呼吸器内科・呼吸器外科が担当している.
・消化器内視鏡検査は,基本的に消化器内科が予約するシステムである.
・内視鏡時のタイムアウト,サインアウト導入など,医療安全に注力した運営を心掛けている.
(H28年4月現在)
医師(含 消化器内科):指導医1(5)名,専門医1(10)名,その他スタッフ(5)名
内視鏡技師:Ⅰ種3名
看護師:常勤7名,非常勤2名
事務職:2名
その他:洗浄員2名
(H28年7月現在)
(H27年1月~H27年12月まで)
近年の医学教育においてはスチューデントドクター制度の導入や参加型臨床実習期間の拡充が行われている.また,山形大学医学部では,臨床実習時に内視鏡シミュレーターによる内視鏡実習を取り入れている.このため,初期研修医であっても,学生時代からすでに消化器内視鏡の臨床現場における経験を積んでおり,導入教育が以前よりもスムーズに行われている.
初期研修医に対しては,以下の研修体制をとっている
1)内視鏡検査の基礎的事項に関して導入レクチャーを受ける(インフォームドコンセント,リスクマネージメント,感染制御を意識した介助方法など).
2)内視鏡機器の取り扱いに関してレクチャーを受ける(検査前のセッティングから終了時の対処,一次洗浄など).
3)ESD,ERCP等の治療内視鏡に関しては介助や外回りを経験しながら,最終的に助手として参加し,手技・患者管理・合併症について上級医(内視鏡指導医/専門医)より指導を受ける.
4)内視鏡シミュレーター(GI mentor Ⅱ)にて,内視鏡検査手技に関してトレーニングを行う.内視鏡シミュレーターにおいてスコープ操作に問題のないことを上級医が判断し,実検査への移行を許可する.
5)上部内視鏡・下部内視鏡において上級医とともに実検査を行う.
スコープの「抜き操作」から開始し,徐々に「挿入操作」へ移行する.
消化器内科を志す3年目以降の後期研修医には,日本消化器内視鏡学会専門研修プログラムに準じた専門研修を行い,低侵襲で精度の高い医療を提供できる専門医育成を目指している.後期研修医に対しては以下の研修体制をとっている.
1)上下部消化管,肝胆膵領域における消化器内視鏡学の基礎および役割について,知識と経験を習得する.
・内視鏡に用いる内視鏡機器・処置具に関して理解し,実地運用できる.
・内視鏡の適応と禁忌に関して理解し,安全な診療を実践できる.
・前処置や鎮静・鎮痛の知識を有し,安全かつ低侵襲な診療を提供できる.
・内視鏡の偶発症と予防・対処法について十分な知識を習得する.
・診断学として各専門的診断手技,疾患について理解し,経験する.
2)消化器内視鏡学の基礎を学びながら,同時に,専門医に求められる事項(コミュニケーションスキル,感染制御スキル,チーム医療におけるリーダーシップ,偶発症の予防と発生時の対応・対策など)を習得していく.
高度専門技能の習得は,消化管,胆膵,肝臓の各グループにおいて指導を受け,研鑽を積みながら体得していく.また,積極的に内視鏡セミナーや学会,研究会へ参加し,奥行きのある考察力を涵養することも求めている.
当施設の内視鏡環境においては長い間,下記内容が問題点であった.
(設備関係)
・内視鏡室の面積が狭いうえに長い.
・全体が縦長の構造であったため,医師・看護師,患者,スコープ等の各種動線が重なり合い,業務遂行に問題山積.
・検査台への誘導路が狭く,車いすやストレッチャー対応の検査台が限られる.
・電源供給が壁面,床面からであり,床上が電源ケーブルなどであふれ,十分に清掃できない.
・検査台同士の間仕切りがカーテンであり検査時のプライバシーが保てない.
・高周波装置の設置や介助スペースに余裕を持った治療専用室がない.
・臨床実習学生の居場所がない.
(内視鏡機器関係)
・内視鏡機器の更新が行われない.
(人員関係)
・内視鏡専属の内視鏡技師や看護師,洗浄員が少ない.
・受付クラークなど事務対応する人員が少ない.などなど数多の問題点が未解決であった.
検査室の面積や設備については,本年度に完成した病院再整備事業によりほとんどの問題が改善・改良されることとなった.具体的には,面積が拡大(旧195m2→新465m2)したことにより,各種動線が極力重ならない設計にし得た.また,急変時の対応等を考慮し,すべてのスペースが複数方向からアプローチできるように配置した.各検査スペース(20~24m2)は個室化とし,患者プライバシーに配慮した検査室となった.全検査室において電源や医療ガスの供給や吸引,画像ケーブル等は,すべて天吊りユニットからの配線とした.これにより,床上にケーブルやコードの無い状態を維持し,清掃業務をし易くすることで環境衛生の向上が得られるようになった.また,治療を行う専用室を治療内視鏡室として設置するとともに,これまで無かった診察室,リカバリー室,洗浄室,カンファレンス室,スタッフ休憩室を配置した.
検査室内に大勢の学生や研修医が入り込むことで患者が感じるストレスや患者プライバシーに配慮することと,学生教育を両立するために,全内視鏡室と透視室の内視鏡画面をカンファレンス室にて同時観察できるマルチモニターシステムを導入し,内視鏡室内に入らなくても画像や検査治療手技を学べるようにした.
内視鏡については2~3年毎にリース契約を部分更新し,各回おおよそ3割ほどの機器更新を行える状態とし,機器の充実に努めている.
さらに,多くの施設で懸案事項となる看護師や事務担当クラークの増員についても病院幹部や看護部に日々陳情を行い,人員確保に努めている.
今後の問題点としては,老朽化しているシミュレーターの更新や病院ホスト画像サーバーへの全内視鏡動画録画(現在は,光学医療診療部内にある動画録画システムによる選択的録画)が挙げられる.
当施設としては,今後も医療安全に注力し,大学附属病院に求められる高度内視鏡診療を提供するべく,設備や機器の更なる向上に取り組んでいく.