抄録
わが国の土地問題のうち「所有者不明土地問題」に対しては過去 10 年程の間に問題解決に向けた各種法制度が相次いで講じられ,2023 年 4 月には民法に基づく「所有者不明土地管理制度」が施行された。この数ヵ月の同制度の適用状況をみると,過去の類似制度と比較して急速な広がりが確認でき,長年の懸案であった所有者不明土地問題の解決に向けた大きな寄与が期待される。本稿では所有者不明土地問題に係る主な法制度を概観したうえで,所有者不明土地管理制度とその比較対照としての地域福利増進事業に着目し,その制度運用面の特性と課題に触れる。そのうえで,所有者不明土地問題の解決を,各地域での適正な土地利用・管理につなげていくための視座を提起する。