臨床リウマチ
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原著
Sauvé-Kapandji法施行後の尺骨断端部に関する検討
岸田 愛子徳永 大作藤原 浩芳小田 良小橋 裕明遠山 将吾北條 達也久保 俊一
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2011 年 23 巻 1 号 p. 55-61

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抄録
目的:Sauvé-Kapandji法(S-K法)の術後合併症として,近位尺骨の遠位断端部(ulnar stump)に,疼痛を伴うclickを生じる例が存在する.Ulnar stumpの位置や形状とclickの発生の関連について検討した.
対象と方法:関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者51例60手を対象とした.経過観察時の単純X線正面像で橈骨遠位関節面からulnar stumpまでの距離をulnar distance(以下UD)と定義して計測した.有痛性click(+)例と無痛性click(+)例で,UDとの関連を検討した.尺骨径に対するulnar stumpの横径が50%以下の例をulnar stumpのtapering(+)と定義した.また,橈骨に生じるscallopingの有無を検討した.Ulnar stumpのtaperingおよびscallopingの有無とclickの関連を検討した.
結果:60手のうち,無痛性clickを40.0%に,有痛性clickを8.3%に認めた.UDは24.5±5.8mmであった.UDと有痛性,無痛性clickの存在との間には有意な関連を認めなかった.Taperingは(+)例が35%,(-)例が65%であった.Tapering(-)例では有痛性click(+)例が9.3%と若干高率であったが,clickとtaperingの有無の間に有意差は認めなかった.またscallopingは35%に認め,そのうち無痛性click症例は15%,有痛性click症例は1.7%であった.考察:今回の検討では有痛性clickの発生率は8.3%であった.有痛性clickの発生とUDの間に相関を認めなかった.これは,当初からUDが平均24.5mm と比較的遠位で骨切りを行っている例が多かったことも要因として考えられる.有痛性clickはtaperingのある例で4.8%であったのに対し,taperingのない例では10.2%に生じていたが有意差は認めなかった.有痛性clickはむしろscallopingのない例に多い傾向を認めたが,scallopingは有痛性click発生との相関はないと考えた.
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© 2011 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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